松本穂香「地味だった」学生時代、居場所を求めた過去

ドラマ『この世界の片隅に』でみずみずしい存在感を放ち、その後は数々の作品で主演に抜てきされるなど、22歳の松本穂香が実力派若手女優の筆頭として、めきめきと頭角を現している。市井の人々に宿る輝きを描く映画『わたしは光をにぎっている』では、自分の居場所を探す主人公・澪を好演している松本。彼女自身、芝居という熱中できる場所を見つけるまでは、「クラスでもものすごく地味なタイプでした。自分ってダメなのかなと思っていたし、なかなか自分の居場所を見つけることができなかった」と告白する。今、どのように女優業と向き合っているのか。元気の源までを語ってもらった。



「自分の出ている映画を観て、こんなふうに泣いたのは初めて」


故郷を出て、東京の下町・立石にやってきた澪が、不器用ながらも自分なりに生きる道を見つけていこうとする姿を描く本作。松本は、澪が働くことになる銭湯や、昔ながらの商店街など、どこか懐かしく、愛おしくなるような風景にスッと溶け込み、透明感あふれる存在感を発揮している。


メガホンを取った中川龍太郎監督が、松本自身を澪役としてイメージした形で脚本が完成した。それだけに松本も「ここまで、取り繕おうとせずに役を演じたのは初めて。澪の心の動きなど、そのすべてが私の中にもあると思った」と澪に並々ならぬ共感を寄せ、こんな初体験も味わったという。「完成作を観て、思わず涙が溢れてきてしまったんです。自分の映画を観て、こんなふうに泣いたのは初めてです。“作り込まないこと”を意識して演じていたのに、映画の中ではちゃんと澪として見えていたのが面白くもあり、うれしくて。客観的に観て、こんなにも自分が好きだなと思える映画に出演できていることを、すごく幸せに感じました」。


「クラスでも地味なタイプ。自分ってダメなのかなと思っていた」芝居との出会いが転機に


上京してスーパーで働いてみるものの、客からの質問やクレームに対応できず、すぐに店を辞めてしまうなど、澪は自分になにができるのか、自分がやりたいことはなんなのかがわからず、さまよう女の子だ。本作だけでなく、『酔うと化け物になる父がつらい』(2020年春公開予定/片岡健磁監督)、『みをつくし料理帖』(2020年秋公開予定/角川春樹監督)など、主演作が相次ぐ松本だが、「なかなか始めたことも長続きしなくて、中学ではバレーボール部に入ったんですが、すぐに辞めてしまって。自分ってダメなのかな、飽き性なのかなと思っていた」と澪と同じような悩みを抱えていたと明かす。


その悩みを打破できたのが、芝居との出会いだ。「お芝居に夢中になれたのは、高校生のときに演劇部に入ったことがきっかけです。私はクラスでも発言するようなタイプではなくて、ものすごく地味なタイプで。でも演劇部で役をもらうと、恥ずかしいなと思うことでも言うことができたり、演じることがどんどん楽しくなっていったんです」とニッコリ。「さらに自分の興味あることに挑戦してみようと思って、事務所のオーディションを受けてみました。やらないよりは、やった方がいい!と。今もこのお仕事を辞めたいと思ったことはないので、飽き性だったというよりは、それまでの自分は、やりたいことや好きなことが見つかっていなかったのかなと思います」と力強く邁進している。

松本穂香の仕事論「一生懸命やることが、次につながる」


本作には、澪の成長とともに、発展や再開発の名の下に、大きく変わりゆく東京の姿も描き出されている。本作を通して松本は、「澪はおばあちゃんから『形あるものはなくなるけれど、言葉や思い出はずっと人の中に残る』という言葉をもらいます。私も終わりを受け入れることや、その終わりを次につなげることの大切さを考えるようになりました」と演じながら、学ぶことも多かったと話す。


その思いは、まさに女優業にもつながるもの。「ひとつひとつ、続けてきたことが経験となって、自分の中に残っています。本作の中川監督とも3年前にお会いして、一緒にやりたいとおっしゃってくださった。今は『みをつくし料理帖』の撮影中ですが、角川監督は『この世界の片隅に』を観てくださって、私を見つけてくれました。一生懸命やっていると、次につながるものだなと実感しています。そして私を選んでくださったということは、期待をしてくれているということ。だとしたら、がっかりさせたくないし、『あなたでよかった』と言ってほしいです。私は器用なタイプではないので、とにかくいつでも、一生懸命に作品や役に向かおうと思っています」。


元気の源は、ジャルジャル!

悩んだときに思い出すのが、事務所の先輩でもある有村架純からもらった言葉だという。「(NHK連続テレビ小説)『ひよっこ』でご一緒したときに、私が悩んでいたら『最初からできちゃダメだと思うよ』と言ってくださって。いろいろな現場、作品を経験してきた方だからこそ言える言葉ですよね。有村さんがいてくださることがすごく心強く感じましたし、今でもなにか悩むと思い出す言葉です」。


また忙しい日々を過ごす上でのリフレッシュ方法は、「お笑いが好きで、YouTubeを見たりしています」と大きな笑顔を見せる。「昔からジャルジャルさんのファンで、毎日YouTubeを見ています。お二人自身が一番楽しそうにやっているのが、最高だなと思うんです。一度お会いさせていただいたことがあるんですが、それは、東京に出てきて一番興奮した日かもしれません(笑)。このお仕事をやっていてよかったなと思いました」。たくさん笑って、心にも栄養補給。「撮影現場にいても、以前より周りがよく見えるようになって、スタッフさんとも交流ができるようになったんです。今、お仕事がすごく楽しいです」という松本穂香が、これからもたくさんの表情を見せてくれそうでますます楽しみだ。


文:成田おり枝

写真:稲澤朝博


『わたしは光をにぎっている』は11月15日(金)より全国公開

配給:ファントム・フィルム

©2019 WIT STUDIO / Tokyo New Cinema

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